■■はじめに



先日購入し、けっこう大活躍しているZoom MS-50G(通称マルチストンプ)。

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小さな筐体に、これでもか!というほどの機能を詰め込んでいますので、全国のプレイヤーがライブで使うにあたっていろいろな制約を解決するためのトンチを働かせ、ということを繰り返しています。



僕も、拙い理解と解説ではありますが、自分の頭の整理として書いておこうと思います。



今回記事にするのは、マルチストンプの「タテ」と「ヨコ」です。



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■■「タテ」と「ヨコ」



唐突に「タテ」「ヨコ」と言われても、何のことやら…だと思いますので、概要を図示しました。

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■■タテ式:概要



1. コーラスブースター
2. バイパス(空のパッチ)
3. アコシミュ
4. バイパス(空のパッチ)
5. フランジャー
6. バイパス(空のパッチ)


使用するパッチの間に、バイパスのみの「空パッチ」を挟む「タテ式」



■タテ式まとめ

・メリット
- 曲中に複数のパッチを使用することが簡単(ただし事前に設定した順番に限る)。

・デメリット
- 使ったパッチを「もう一度使いたい」時には、設定した順番を一周させなければならない。
- パッチの使用順は、あらかじめ設定しておかなければいけない。
- 「使いたいパッチのひとつ前」を把握しておく必要がある。



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■■ヨコ式:概要



パッチに「ラインセレクター」を挿入することで、ラインセレクター以降のユニットをON/OFFする「ヨコ式」。


【例】歪み→ラインセレクター→フランジャー→ディレイ→リバーブ

フットスイッチを踏むとラインセレクターをON/OFFできるよう準備しておくことで、フランジャー以降を一括でON/OFFできる。



■ヨコ式まとめ

・メリット
- ユニットのON/OFFを切り替える方式なので、使いたいパッチ(実態はユニット群)の再利用が簡単。

・デメリット
- 曲中に複数のパッチを使用することは不可能。
- パッチを切り替える時にはエフェクター本体のツマミを操作しないといけない。



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■■詳細解説の前に



「タテ」「ヨコ」については、実機をお使いの方ならなんとなくイメージできるかと思います。
タテとヨコを組み合わせることで、可能性は広がります。

要するにフットスイッチを踏むことによって、

 タテ式: エフェクターボードごと交換される
 ヨコ式: エフェクターボード経由とバイパスの切り替え


が行われるとイメージしておいてください。



ここから先の話は細かくて長くて、もう大変です。



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■■タテ式:詳細解説



タテ式のメリットについては、これまでの記事で書いたので割愛します。
ここでは後述の「ヨコ式」へ話題をつなげるためにも、タテ式で実現困難な例を挙げて解説します。



曲中で「【1. コーラスブースター】をON/OFFしたい!」という時の操作を、事例として用います。
設定は、前述の

1. コーラスブースター
2. バイパス(空のパッチ)
3. アコシミュ
4. バイパス(空のパッチ)
5. フランジャー
6. バイパス(空のパッチ)


を用います。



【6. バイパス】で待機させておく
 ↓
コーラスブースター、1回目の使用時にフットスイッチを踏む
 ↓
【1. コーラスブースター】に切り替わる
 ↓
コーラスブースターの使用が終わり、フットスイッチを踏む
 ↓
【2. バイパス】に切り替わる
 ↓
コーラスブースター、2回目の使用時までに…
 ↓
フットスイッチを4回踏んで【6. バイパス】で待機させておく
 ↓
コーラスブースター、2回目の使用時にフットスイッチを踏んで【1. コーラスブースター】に切り替える




となります。

文字にすると、少しややこしい手順になります。
もちろんライブ中では混乱の元となります。

ただでさえ不器用な僕がギタボしながら「4回踏んでバイパスで待機させておく」というのは不可能に近いです。
もちろん「4回踏む」間にもパッチを次々と経由するので、出音にも影響します。



そして恐ろしいことに、タテ式ではパッチ切り替えは「一方通行」です。

もし「4回踏む」ところで「3回しか踏めなかった」とか「5回踏んでしまった」なら、バイパスどころか意図していないパッチが適用されてしまいます。

「4回踏む」ところで「4回以外」踏んだ時のリカバリーは容易ではありません。

「今、何のパッチが鳴っているか」
「目的のパッチまでは、あと何回踏めばいいか」
「目的のパッチのひとつ前のバイパスはどれだったか」
などを瞬時に把握して、適切な回数だけフットスイッチを踏む必要があります。



そもそもそこに一瞬でも注力するのなら、ライブそのものに集中したい、というのはライブ中のバンドマンの本能ではないでしょうか。



「できない」「やりたくない」の両面から、タテ式ではパッチをON/OFFするのは、事実上断念です。



結論として、タテ式の用途は
「一曲の中で、一度だけ、パッチを使う」
という、限定されたものになります。



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■■ヨコ式:詳細解説



タテ式の課題を解決し、
「一曲の中で特定のパッチを複数回ON/OFFする」
ための手段が、今回紹介した「ヨコ式」です。



上記の「曲中で【1. コーラスブースター】をON/OFFしたい!」という時の手順をヨコ式でまとめると、以下のようになります。



1. コーラスブースターのパッチの先頭に「ラインセレクター」を挿入する
 ↓
2. マルチストンプを操作して「フットスイッチでラインセレクターのON/OFFを切り替える」ように設定する




これで「ヨコ式」の準備は完了です。

あとはラインセレクターのON/OFFに従って、「コーラスブースター←→バイパス」が変化します。
正確に書き表すと、
「【ラインセレクター】という【ユニット】をON/OFFすることで【コーラスブースター】の【パッチ】のON/OFFと同等の効果を得る」
ということになります。



「フットスイッチでユニットのON/OFFを切り替える」のは、パッチ全体をひとつのエフェクターボードだとイメージし、片足を「どれか」のエフェクターにかけて待機している状態だと思ってください。

「リバーブだけ」「コーラスだけ」「歪みだけ」をON/OFFするための状態です。

「ヨコ式」は「ラインセレクターに足をかけて待機している」状態です。



「ヨコ式」だと、マルチストンプを通常のコンパクトエフェクターと同じ感覚で使うことができます。

操作感はコンパクトエフェクターのまま。
しかし出音はマルチエフェクター。


と、マルチストンプを「おいしいとこどり」で使うことができると思います。



しかしヨコ式にもデメリットがあります…



ヨコ式では、「曲中に複数のパッチを使うことが不可能」です。

厳密には複数のパッチを使うことが可能ですが、「手でマルチストンプを操作する」必要があります。
演奏中に楽器から手を離す余裕のない曲以外は、パッチ変更は不可能です。
個人的には、ギターボーカルという立場では、ライブ中にあまりかがみこみたくない、という事情もあります。



こちらの結論としては、ヨコ式の用途は
「一曲の中で、複数回パッチ(実態はユニット群)を使う」
という、これまた限定されたものになります。



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■■タテとヨコ、メリットとデメリット



以上を踏まえて、もう一度「タテ式」と「ヨコ式」のメリット・デメリットを再掲しておきます。



■タテ式

・メリット
- 曲中に複数のパッチを使用することが簡単(ただし事前に設定した順番に限る)。

・デメリット
- 使ったパッチを「もう一度使いたい」時には、設定した順番を一周させなければならない。
- パッチの使用順は、あらかじめ設定しておかなければいけない。
- 「使いたいパッチのひとつ前」を把握しておく必要がある。



■ヨコ式

・メリット
- ユニットのON/OFFを切り替える方式なので、使いたいパッチ(実態はユニット群)の再利用が簡単。

・デメリット
- 曲中に複数のパッチを使用することは不可能。
- パッチを切り替える時にはエフェクター本体のツマミを操作しないといけない。




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■■ライブの現場では



以下は、「僕がマルチストンプを使うなら」の想定で書いた「実践編」です。



基本は、タテ式でセッティングしておきます。

1. コーラスブースター
2. バイパス(空のパッチ) ※3.の待機用
3. アコシミュ
4. バイパス(空のパッチ) ※5.の待機用
5. フランジャー
6. バイパス(空のパッチ) ※1.の待機用(ライブで最初の設定はここ)




そして「ヨコ式で使うパッチにだけ」ヨコ式対応セッティングとしてラインセレクターを先頭に挿入します。



下の例では、【3. アコシミュ】を、ヨコ式にセッティングします。

1. コーラスブースター
2. バイパス(空のパッチ) ※1.のOFF用
3. ヨコ式 アコシミュ
4. バイパス(空のパッチ) ※5.の待機用
5. フランジャー
6. バイパス(空のパッチ) ※1.の待機用(ライブで最初の設定はここ)




【3. ヨコ式 アコシミュ】を使用する曲の前には、以下の準備を行います。

曲の開始前に【3. ヨコ式 アコシミュ】を呼び出しておく(フットスイッチを踏むことで可能)
 ↓
マルチストンプを操作して、ラインセレクターのON/OFFができるように準備する





こうすることで、アコシミュを使う曲では、曲中にアコシミュのON/OFFを切り替えることが可能です。
「サビ以外はアコギ、でもサビと間奏だけ歪み」みたいな曲に対応できます。

ライブ中にパッチ変更のためにかがみこむのも、最低限で済みます。



パッチは、「必ず先頭にラインセレクターを挿入する」ようにしておくと、いつでもヨコ式に対応できますね。書きながら気づきました。



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■■まとめ



・フットスイッチを踏むことで
 - タテ式: エフェクターボードごと交換される
 - ヨコ式: エフェクターボード経由とバイパスの切り替え

・一曲の中で
 - 複数のパッチを使うなら、タテ式。ただし使えるのは一回限り。
 - 単体のパッチを複数回使うなら、ヨコ式。ただし複数のパッチは使えない。

・パッチの切り替えがタテ、ユニットの流れがヨコ。

・ライブのセットリストによって、タテヨコを組み合わせて使う。

・パッチは先頭にラインセレクターを挿入することで「ヨコ対応」可能になる。




と、いうことになります。



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■■あとがき



以上です。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。



この「ラインセレクターを活用する」という方法は、先日開催された「EffEXPO 大阪」というイベントのZOOMブースでいただいた「ZOOM MULTISTOMP BOOK」に書かれていました。

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パッと読んだときは「ふーん」ぐらいの感想だったのですが、いろいろ考えているうちに可能性を感じてしまい、記事にまとめておこうと思った次第です。

タテ式で感じていた制約を一気に解決する「ヨコ式」は、気づいた瞬間は飛び上がるほど嬉しかったのですが、ライブ中に「セッティングを変更するために、かがんでエフェクターを操作しないといけない」点が、個人的な最大のマイナス要素です。

ただ、うまいこと組み合わせて使うことで、マルチストンプのポテンシャルをもっと引き出してやりたいな、と思います。



最後に、上記のメリットやデメリット、「できる」「できない」などは、あくまで「僕が、ライブで使うケース」での記述です。全ての人に当てはまるものではないことを注記させていただきます。





…ご清聴ありがとうございました。